甑島の魂の継承「トシドン」


 10月16日,鹿島中学校の生徒は,鹿島小学校との合同学習会の際に,下甑歴史館を訪問しました。そこで,10月1日にユネスコ世界文化遺産に登録されたばかりのトシドンについて,歴史館の橋口義民さんにいろいろ教えていただきました。
 NHKアナウンサーで,当時フリージャーナリストに転じられたばかりの下重暁子さんが,甑島を取材されたことが,全国的に注目されるきっかけになったこと。下甑郷土誌再編の際に,下甑各地に伝わるトシドンの違いを詳しくまとめられたこと。義民さん自身が,子どものころトシドンに,やんちゃで「枝渡り」をして怒られたことや手伝いをしていたことをほめられたことが,不思議だったことなど,子どもたちにも分かりやすくお話ししていただきました。
 特に興味深かったのが,トシドンは大晦日だけに現れ,子どもの1年のよいところ,悪いところを教え,来年の成長を諭す「教育」であったことです。同じような民族的な行事,秋田の「なまはげ」や石垣島「アカマタ・クロマタ」が宗教性が強く,仕事を怠ける人を脅かす要素が強いこととは明らかに違う教育性が,トシドンの特徴であるということでした。
 トシドンの教えが,子どもたちの精神力や道徳性を培い,地域の教育力を高めてきたことは,意義のあることだと想います。これから鹿島や下甑のトシドンについて更に調べていくことで,子どもたちが,甑島の先人が子どもの教育にかけた思いを知り,甑島の魂を継承していくことを願っています。

(平成21年11月)


甑島の魂の継承「トシドン」


 12月に大河ドラマの替わりに司馬遼太郎原作の 「坂の上の雲」が放映されています。日露戦争で日本勝利の陰の力となった,連合艦隊参謀の秋山真之と兄の陸軍騎兵の父,秋山好古を中心に明治において近代日本へ脱皮を図る若き日本の群像を描いた作品です。
 秋山兄弟と同郷の幼なじみとして、正岡子規が登場します。子規は,貴族やご隠居の道楽と堕していた短歌を、近代の「文学」に革新しようとした文学の偉人で、蕪村の影響から客観描写の俳句に目覚め、若き洋画家たちとの交友から、西欧の写生理論を学び、それを短歌に「写生」論として持ち込みました。

  冬ごもる 病の床の ガラス戸の 曇りぬぐへば 足袋干せる見ゆ      正岡子規

  この当時子規は,末期の脊髄カリエスにむしばまれ,絶え間ない激痛の中での創作活動でした。それに屈することなく,秋山兄弟をはじめ,明治に生きた日本人がもっていた改革へのエネルギーを,子規も同じように病の床から短歌革新へ発散させたのでした。そのエネルギーの源は,この時代に生きた日本人に共通する,海外の近代的な思考をどん欲に吸収し,日本を変革したいいう共通のものだったと思います。
  軍の近代化に努め,日露戦争という瀬戸際の戦いから勝利に導いた秋山兄弟と文学の革新に生命を賭けた子規が,原点でつながっていて,同じように時代を駆け抜けたことを,司馬遼太郎の「坂の上の雲」の原作からより詳細に知ることができました。
  TVや映画がきっかけで,原作にふれることは,よくあることだと思います。そのとき,その作品だけに終わらず,作者の他の作品や,関連する歴史的な背景について,興味をもつことは,読書の醍醐味だと思います。鹿島中学校の図書館には,すばらしい本がいっぱい収められています。それを眠らせないためにも,冬休みは自分から読書に励み,多くの知識や刺激を受けて欲しい思います。  平成21年12月24日
 


甑島の魂の継承「トシドン」


  1月19日に,平成21年度からスタートした「コミュニケーション」科の中核となる「鹿島学」の発表会を開きました。当日は,1年「としどん」2年「定置網漁業」3年「老人の福祉」について1年かけて,体験したり調べたことを,パソコンのプレゼンテーションで発表してくれました。
  支所から,支所長さんを始め各課長さん,鹿島園からは園長さんが,生徒の発表に対して,鹿島の実態に応じた行政を進める側からの,的確な指導や助言をいただきました。支所3階旧村議会議事場の整った施設も活用でき,生徒にとっては,すばらしい経験になりました。また,鹿島小の5,6生も一緒に発表を聞き,自分たちの取り組んでいるものが,どういう学習なのかを実感してくれたと思います。
 鹿島学の意図することについては,学校便りの場をお借りして, 何度かふれてきました。今まで,地域で体験活動を行っても,それだけで終わりがちだったな総合的な学習を,コミュニケーション科の単元として,再編し,計画的に学んでいくことで,児童・生徒が小中学校9年間の中で,地域の様子やよさを実際に学び取ることができると思い,鹿島学としてスタートさせました。
  今年度は,地域の方々から今まで以上のご協力をいただき,教師と生徒も,教科として学ぶ意義を理解して,すばらしい成果をあげたと思います。できれば,発表会に来ていただけなかった方々にも,ホームページなどを通して,見ていただき今後の参考にさせていただきたいと,現在検討中です。コミュニケーション科や鹿島学は,鹿島とともに発展,進化していく学習です。今後も,ご協力をよろしくお願いします。  平成22年1月31日


甑島の魂の継承「トシドン」


  昨日,手打スポーツ少年団との錬成会の帰り道,里道海岸でごみ拾いのボランティア活動を行いました。中学生も剣道部員を中心に何名も参加してくれました。
  ボランティア活動は,地域の海岸清掃も含め,ほぼシーズンごとに行っていますが,海岸に着いたとき,今までと比べて大きなゴミがほとんど見えなかったので,「今度は
すぐ終わりそうだ」とみんな思ったはずです。ところが,いったん始めてみると,石の間や下に無数のペットボトルの蓋やプラスチックの破片があり,準備した袋はみるみるいっぱいになりました。
  これまでは,ペットボトルの本体やプラスチックの容器などが多く,いかにも,誰かが投げ捨てましたという感じのゴミが多かったのですが,今回は一旦回収されて,細かく砕いたり蓋だけ分別したものが,また投棄されたという感じの状態でした。明らかに鹿島の人たちが捨てたゴミではないものが,冬の潮の流れに乗って海岸に流れ着き,たまってしまったゴミだと思います。
  「せっかく自分たちが分別したり,収集したりして,ゴミを出さないように努力しているのに。」そんな思いを持ちながら,たくさんのゴミをみんなで持ち帰りました。
  鹿島中では,朝のスマイリッチ活動,毎月の夜回り,それにゴミ収集など,多くのボランティア活動を行っています。中には,自分たちの気持ちが理解してもらえず,空しく感じることもあるかもしれません。でも,それでボランティアの気持ちを失うのではなく,「いつかは自分たちの思いが通じるのだ」と思い続けて欲しいと思います。
  ボランティアは無償の行為です。賞賛や利益を考えてやっていたのでは,長続きはしませんし,自分の心も育ちません。でも,いつかはその思いや通じ,成就することがあることを信じ,がんばってください。       平成22年2月8日 全校朝会